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東京高等裁判所 平成5年(ネ)3236号 判決

控訴人

東都観光企業株式会社

右代表者代表取締役

宮本繁樹

右訴訟代理人弁護士

高山征治郎

東松文雄

亀井美智子

中島章智

枝野幸男

被控訴人

杉山俊一

右訴訟代理人弁護士

林千春

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

主文同旨

二  控訴の趣旨に対する答弁

控訴棄却

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被控訴人は、昭和六二年五月八日、控訴人が経営管理するゴルフ場「東都飯能カントリー倶楽部」(以下「本件ゴルフ場」という。)の第一次個人正会員の募集に応じ、ゴルフ場会員契約を締結し(以下「本件入会契約」という。)、平成三年八月九日までに入会金三〇〇万円、預託金一九〇〇万円、合計二二〇〇万円を支払った。

2  被控訴人は、本件入会契約を締結するに当たり、控訴人の広告や説明などから、以下のように考えていた。

① 本件ゴルフ場は昭和六三年秋には完成する。

② コースはフラットであり、コースの高低差は一〇メートル以内である。

③ 本件ゴルフ場は、ゴルフ場としてプレー的魅力があり、戦略性に富む名門コースとなる。

④ ゴルフ場用地は、一〇〇パーセント被控訴人の社有地である。

3  ところが、実際には、以下のとおりであったから、本件入会契約の締結は、要素の錯誤に基づくものであり、無効である。

① 本件ゴルフ場は、造成工事の遅延により、平成二年一二月に、平成三年梅雨明けに完成・開場(以下「オープン」ともいう。)予定と変更され、その予定を半年過ぎても完成、オープンしなかった。

② 本件ゴルフ場には、高低差一〇メートル以上二〇メートル未満のホールが二ホール、二〇メートル以上のホールが九ホールあり、高低差が四一メートルあるホールもある。

③ 本件ゴルフ場は、度重なる設計変更によって、距離の短縮、高低差の著しさ、コース幅の狭さなどにより、魅力のないものとなっており、会員権の相場も八五〇万円程度で低迷している。

④ 本件ゴルフ場の用地は一部が借地である。

4  前記2、3からすれば、控訴人には、本件入会契約についての債務不履行があるので、被控訴人は、控訴人に対し、平成四年二月一日控訴人に到達した書面で、債務不履行を理由として、本件入会契約を解除する意思表示(以下「本件解除」という。)をした。

5  よって、被控訴人は、錯誤による本件入会契約の無効あるいは本件入会契約の債務不履行による解除を原因として、控訴人に対し、支払い済みの入会金及び預託金計二二〇〇万円及びこれに対する本件解除の日の翌日である平成四年二月二日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は知らない。

3  同3の冒頭の主張は争う。

① 同①の事実及び主張は争う。ゴルフ場の完成と開場とは異なり、本件ゴルフ場の開場は早くて昭和六四年秋と予定されていたところ、実際に開場したのは平成三年七月二五日であるから、開場の遅延は二年に満たない。

② 同②の事実は認めるが、パンフレットに記載されている高低差一〇メートル以内というのはあくまで目標であって、契約内容ではなかった。

③ 同③の事実及び主張は争う。本件ゴルフ場のコースはフラットで、フェアウェイは広く、真っすぐで距離も十分あり、戦略性に富んでいる。なお、会員権の相場の低迷は、バブル経済の破綻による日本経済の低迷によるもので、控訴人の責任ではないし、レイアウトの良否とは関係がない。

④ 同④の事実は認めるが、その主張は争う。ゴルフ場用地が借地であるか否かは入会契約の要素ではない。

なお、その後、買収により、本件ゴルフ場用地は一〇〇パーセント控訴人所有地となっている。

4  同4の事実中、本件解除の事実は認めるが、債務不履行は争う。

三  抗弁(債務不履行による解除について)

1  被控訴人の黙示的承諾

控訴人は、平成元年と平成二年一二月に、被控訴人を含む会員に対し、オープンの遅延とレイアウトの変更を通知したが、被控訴人は、それに対して平成四年一月までなんらの異議を述べなかったうえ、平成三年七月と一一月に本件ゴルフ場で異議なくプレーし、さらに本件解除後の平成四年八月にも本件ゴルフ場を利用しているのであるから、被控訴人は、本件ゴルフ場のオープン遅延及びレイアウトの変更を黙示的に承諾していたというべきであり、債務不履行に基づく解除権を有しない。

2  信頼関係が破綻したと認めるに足りない特段の事情

ゴルフ場会員契約が継続的契約関係であることからすれば、債務不履行により入会契約を解除するには、当事者間の信頼関係が破壊されることが必要であるが、本件では、以下のとおり、信頼関係が破壊されたと認めるに足りない特段の事情がある。

① 本件ゴルフ場のオープンの遅延は二年に満たないうえ、その遅延の原因は控訴人の責に帰すべき事由によるものではなかったし、控訴人は、当初のオープン予定に近付けるようあらゆる努力を払った。また、控訴人は、オープンの遅延とその原因をレイアウトの変更とともに、会員に通知している。

② 本件ゴルフ場は前記の程度の遅れで開場しており、通常の利用が可能になっていることからすれば、開場遅延の債務不履行は治癒されているというべきである。また、控訴人は、開場後直ちに会員名簿を発行し、名義書換を開始するなど、会員主体の良心的で健全なゴルフ会員制事業を営んでいるうえ、コースの改修も行っている。

③ 本件のような事案で、会員契約の解除が認められれば、ゴルフ場は回復不能の損害を被る。なお、本件ゴルフ場の経営主体である控訴人及びその親会社の東都自動車株式会社は、本件ゴルフ場を含め、四つのゴルフ場を経営しており、経営母体の経済的信用と実績に欠けるところはない。

3  権利の濫用等

前記1、2の諸事情に加え、被控訴人は本件ゴルフ場でプレーするという契約本来の目的は達せられているにもかかわらず、バブル経済崩壊によるゴルフ会員権の値下がりを控訴人の損失において回避すべく、契約解除に名を借りて、拠出金全額の返済を求めていることなどからすれば、被控訴人の解除権行使は権利の濫用に当たり、あるいは信義則に反し、許されない。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実中、控訴人が二度にわたり、被控訴人に手紙等を送付したこと、被控訴人が本件ゴルフ場で三回プレーしたことは認めるが、その余の事実は否認し、その主張は争う。

2  同2の冒頭及び①ないし③の事実中、控訴人が名義書換に応じていること、会員名簿を発行していることは認めるが、その余の事実は否認し、その主張は争う。

3  同3の事実は否認し、その主張は争う。

第三  証拠

原審及び当審証拠目録記載のとおりである。

理由

一  当事者間に争いがない事実

被控訴人が、昭和六二年五月八日、控訴人が経営管理する本件ゴルフ場の第一次個人正会員の募集に応じて、本件入会契約を締結し、平成三年八月九日までに入会金三〇〇万円、預託金一九〇〇万円、合計二二〇〇万円を支払ったことは当事者間に争いがない。

二  本件ゴルフ場の開場に至る経緯、高低差等について

いずれもその成立に争いのない甲第一、第二、第四ないし第六号証、第一二号証、乙第三ないし第一三号証、第二三ないし第三〇号証、第四三、第四四、第六五、第六八号証、第七六号証の一、二、原本の存在及び成立に争いのない乙第三一、第三二号証の各一、二、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二号証の一ないし三、第三四、第三九、第六九号証、原審証人坂入國保、当審証人村松悦雄、同山越喜久男の各証言及び原審での被控訴人本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  本件ゴルフ場の開場に至る経緯

(一)  本件ゴルフ場は、被控訴人が入会を申し込んだ昭和六二年当時は、昭和六三年秋に完成予定として会員が募集されていたが、その段階では、開場の時期については明示されていなかった。一般にゴルフ場は、造成工事が完成しても、芝を活着させる必要などから、すぐはプレーできず、その後、開場まで多少の期間を要するのが普通であり、開場は平成元年頃を予定していたとみられる。その後、昭和六三年当時の募集要綱では、開場の予定は昭和六四年秋とされた。

(二)  本件ゴルフ場は、着工後、ゴルフ場につながる道路の拡幅工事について、一部地権者の用地買収が遅れたこと、当初予定していた調整池の買収ができなくなり、別の場所に調整池を設置せざるを得なかったこと、排水施設を当初は開渠だったのを暗渠に変更したことなどから、造成工事が遅れ、コースの芝張り等がほぼ完成したのは平成二年一二月頃であった。控訴人は、その頃、各会員宛に、今後の予定としては、平成三年の四月末までにすべての工事を完了し、芝の成育を待って、同年の梅雨明けにオープンしたいと考えていること、オープンに先立って、完成披露パーティを計画していることなどを通知した。

(三)  本件ゴルフ場は、平成三年三月頃までに、その北側から本件ゴルフ場に入る道路や、ゴルフコース、クラブハウスが完成し、控訴人は、同年六月頃までに、クラブハウスの消防用設備等及び建築基準法上の工事完了の検査済証を得、クラブハウス内の公衆浴場、飲食店、売店の営業許可を取り、同年七月六日には落成記念式典及びパーティを行い、同月二五日から本件ゴルフ場の使用を開始することとした。もっとも、この段階では、本件ゴルフ場の東側から本件ゴルフ場に至る道路が未完成で、埼玉県知事から工事完了検査済証の交付を受けられなかったため、控訴人は、「視察プレー」との名目で会員にオープンの通知を出したものであり、スタート時間は午前一〇時からとし、利用者は会員のみとして、ビジターの同伴は認めないことにしていた。このような形で営業を開始したのは、工事完了検査が済んでからオープンしてほしいとの埼玉県の行政指導に従ったものである。

(四)  控訴人は、本件ゴルフ場の会員についての名義書換を平成三年七月二五日から開始するとともに、同年九月一日からゴルフ場利用税の納付を開始した。被控訴人も、同年中に二回本件ゴルフ場でプレーしている。その後、控訴人は、平成四年七月六日付で、本件ゴルフ場の工事完了検査済証の交付を受けた。

2  本件ゴルフ場の高低差について

(一)  本件ゴルフ場の昭和六二年当時の広告や、パンフレットには、本件ゴルフ場は、高低差一〇メートル以内のフラットなコースである旨の記載があった(もっとも、パンフレット裏の各コースの断面図には一五メートルの高低差のあるホールも四つ記載されている。)。本件ゴルフ場の募集要綱には、コースの記載として「一八ホールズ、パー七二、全長六五八六ヤード」との記載があるのみで、高低差等についての記載はない。

(二)  前記のように、本件ゴルフ場の造成の過程で調整池の場所が変更されたことなどから、コースレイアウトが一部変更され、コースが完成した時点での高低差は、最大四一メートル(下り)であって、高低差二〇メートル以上のコースは下り、上りとも各四コースあり、三番コースから四番コースに移動する箇所及び一二番コースから一三番コースに移動する箇所には、ベルトコンベアーが設置された。このような高低差の関係で、本件ゴルフ場は、ややアップダウンは多いものの、一般のプレーヤーが普通に利用できるゴルフ場であり、平成五年には、社団法人日本女子プロゴルフ協会公認の女子プロトーナメントも開催されている。

(三)  本件ゴルフ場の募集要綱では、ゴルフ場の用地は一〇〇パーセント社有地とされていたが、本件ゴルフ場完成の時点では、借地部分が五パーセント弱あった。もっとも、その一部はコース外の緑地である。

三  本件入会契約について

預託金制ゴルフ場の入会契約は、会員となろうとする者が入会金及び預託金を払って、ゴルフ場施設の優先的利用権を取得する契約である。その利用権の具体的内容は、入会契約すなわち、通常は、約款である会則の定めによるところ、募集要綱の記載事項についても、施設利用上重要な部分については、入会契約の内容となる場合もあると考えられるが、本件入会契約のように、ゴルフ場の造成途上で締結される契約の場合は、会員募集のパンフレット等の記載は単なる予定であって全く変更を許さないものではないから、パンフレット等に記載されたというだけで、それがすべて入会契約の内容となるといえないことは明らかである。

四  錯誤の有無について

そこで、本件入会契約の締結に錯誤があったといえるか否かについて判断する。

1  開場の遅延について

ゴルフ場の開場時期がいつかということは、入会契約後の施設利用の開始時に関する重要な事柄であるし、通常、募集要綱にも明記されることであって、入会契約の内容を成すというべきである。

しかし、ゴルフ場の建設には、広大な用地と莫大な資金を必要とし、法令上の制約も多く、用地の買収や許認可手続に相当長期間を要することは一般に知られたことであり、その間、種々の事情の変化が生ずるおそれもあることを考慮すれば、ゴルフ場の開場が当初の予定より遅れるのは入会者の方でもある程度予期すべき事態であると考えられるから(成立に争いのない乙第四〇号証によれば、平成五年一〇月二〇日時点で、二年以上開場が遅延している埼玉県内のゴルフ場は七つあり、うち三年以上遅れているものが四つあったことが認められる。)、開場の時期につき錯誤があったというためには、その遅れが、通常の予測の範囲を超えるような著しい遅延であることが必要であるというべきである。

本件についてこれをみるに、前記二1の事実からすれば、本件ゴルフ場は、当初、平成元年頃に開場が予定されていたと認められるところ、平成三年七月二五日には、会員によるゴルフ場の利用が可能となり、現に被控訴人も同年中に二回、本件ゴルフ場でプレーをしているのであるから、本件ゴルフ場は同日開場したというべきであり、その遅れは二年位であって、前記の著しい遅延ということはできない。

もっとも、平成三年七月の時点では、埼玉県知事から工事完了検査済証の交付を受けられなかった関係で、控訴人は、「視察プレー」との名目で会員にオープンの通知を出したものであり、スタート時間が午前一〇時からとされていたほか、利用者は会員のみに制限され、ビジターの同伴は認めないこととされていたものであるが、ゴルフ場が開場したか否かは、会員が当該ゴルフ場を現実に利用できるか否かによって判断されることはいうまでもなく、行政上の手続が完了しているか否かによって左右されるものではないし、スタート時間の制限や、ビジターの同伴の可否も、会員によるゴルフ場の利用権に対する本質的な制限とはいえないから、この点も前記判断の妨げとなるものではない。

したがって、この点についての錯誤の主張は理由がない。

2  本件ゴルフ場の高低差等について

本件ゴルフ場は、募集段階の広告や、パンフレットにおいて、フラットなコースであり、高低差が一〇メートル以内であるとして宣伝されていたことは前記二2(一)のとおりであるが、募集要綱にこのようなコースの内容が記載されていたわけではないうえ、ゴルフ場の入会契約を締結するに当たって、コースの高低差等のコースのレイアウトも考慮の対象になるにしても、それは入会契約を締結するか否かの判断に当たって種々考慮される事情の一つに過ぎないと考えられるし、広大な規模のゴルフ場の造成工事を進めるに当たり、コースレイアウトの設計変更があることも通常予測されることであるから、パンフレットに表示されたコースの高低差や、コースレイアウトが入会契約の内容を成すとか、一般に契約締結の重要な動機となるとはいえず、このような点に錯誤があったからといって、契約の要素に錯誤があったとはいえない。もっとも、変更後の高低差が極めて大きく、ゴルフコースとしての通常の利用が著しく困難になるような場合には、それが契約の要素の錯誤となる場合もあると考えられるが、前記のように、本件ゴルフ場は多少高低差はあるものの、一般のゴルフプレーヤーが普通に利用可能なゴルフ場であると認められるから、本件がそのような場合でないことは明らかである。

被控訴人は、原審において、本件ゴルフ場がフラットであることが入会契約の重要な動機であったかのように供述するが、たとえそうであったとしても、そのような動機は、控訴人に表示されていないのであるから、いずれにせよ、この点につき、要素の錯誤があったということはできない。

また、被控訴人は、本件ゴルフ場は、度重なる設計変更によって、魅力のないものとなっているとか、会員権の相場が低迷しているとか主張するが、コースレイアウトの点については前述のとおりであり、本件ゴルフ場が魅力のないものであることを認めるに足りる証拠はないし、会員権の相場についての予測が外れたことをもって入会契約上の要素の錯誤といえないことは明らかである。

3  社有地について

本件ゴルフ場が募集段階において、一〇〇パーセント社有地として宣伝されていたことは前記のとおりであるが、会員の施設利用に直接関係しないゴルフ場用地の所有関係が入会契約の内容を成すものではないし、本件ゴルフ場の借地部分は五パーセント弱であって、これがゴルフ場の存立基盤を危うくするものとも認めがたいから、この点に錯誤があったとしても、要素の錯誤ということができないことは明らかである。

五  債務不履行について

1 開場の遅延について

ゴルフ場の開場時期がいつかということは、入会契約後の施設利用の開始時期に関する重要な事柄であり、入会契約の内容を成すものであって、その遅延は債務不履行を構成すると解される。

しかし、前記のように、ゴルフ場の開場が当初の予定時期よりある程度遅れるのは入会者の方でも当然予期すべき事態であることからすれば、ゴルフ場の開場の遅延を債務不履行として入会契約を解除するためには、それが社会通念上相当として是認される程度を越えるような著しい遅延であることが必要であるというべきである。

本件ゴルフ場は、当初、平成元年頃に開場が予定されていたと認められるところ、平成三年七月二五日には開場しているのであるから、その遅れは二年位であって、社会通念上相当として是認される程度を越えるような著しい遅延ということはできず、右遅延を理由としては、本件入会契約の解除権は生じないというべきである。

2 本件ゴルフ場の高低差について

ゴルフ場の高低差等のレイアウトが入会契約の内容を成すものではないことは前記のとおりである。

もっとも、変更後の高低差が極めて大きく、ゴルフコースとしての通常の利用が著しく困難になるような場合には、それが入会契約上の債務不履行を構成する場合もあると考えられるが、前記のように、本件ゴルフ場は多少高低差はあるものの、一般のゴルフプレーヤーが普通に利用可能なゴルフ場であると認められるから、控訴人に債務不履行があったとはいえない。

また、控訴人は、本件ゴルフ場は度重なる設計変更によって、魅力のないものとなっており、会員権の相場も低迷している旨主張するが、前記のように、コースのレイアウトは入会契約の内容ではないし、まして、会員権の相場の低迷が控訴人の債務不履行と結び付くものではない。

3 用地の所有関係について

ゴルフ場の用地に若干の借地部分が入っていたからといって、入会契約上の債務不履行となるものでないことは明らかである。

4 したがって、本件会員契約上の債務不履行を理由とする本件解除の主張は理由がない。

六  以上のとおり、本件会員契約の錯誤による無効あるいは債務不履行による解除を原因として、入会金及び預託金の返還を求める被控訴人の本訴請求は理由がない。

七  よって、民訴法三八六条により、右と結論を異にする原判決を取り消し、被控訴人の控訴人に対する請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について同法九六条及び八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官髙橋欣一 裁判官及川憲夫 裁判官浅香紀久雄)

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